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アマダイ通信  NO.24       2001年元旦     

注)文中に出てくるはアマダイこと不肖干場革治のことです。
(Tile Fish Network Letter)

 知人・友人各位
 明けましておめでとうございます。新しい世紀が皆様にとって、又、宇宙船地球号の60余億のクルーにとっても、希望の世紀となることを祈って、21世紀最初のアマダイ通信を送らせていただきます。

◎恐慌と戦争、革命の世紀から環境の世紀へ
 19世紀の産業革命と重化学工業の勃興が20世紀に資本と労働の対立を決定的なものとし、他方、堪え難い経済恐慌を解決するものとして資本の側からは2度の大戦が準備されて行きました。対立する側からは恐慌と戦争、階級対立を止揚するものとして社会主義革命が実行されましたが、結果の平等を性急に追求する余り、軍隊による平等の強制と経済の非効率を結果し、世紀末にはその短い命を終えたのです。
 短命に終わったとは言え、社会主義国家の実現による体制間の競争は福祉国家とより平等な社会を実現しました。だが、社会主義国家の崩壊と情報技術(IT)革命による産業構造の変革は再び社会の階層差を拡大すると共に、先進国の大量生産・大量消費の経済は化石資源の枯渇と地球環境の破壊を招来しつつあります。又、体制間競争に勝利しグローバル化した資本主義経済が、真に人間を幸せにするシステムたりえたかというと、再び暗黒大陸と化したかの如きアフリカを見るまでもなく、比較的に豊かになった市場経済の優等生であるアジアでさえ、飢餓線上をさ迷う人間が多くいることを考えると、はなはだ疑問です。それに飢餓線以下の人間の全てが豊かな生活を享受するようになった時に消費する資源の量と増大する地球環境への負荷を考えると、先進国の国民が享受する豊かな生活そのものの問題も明らかになります。
 経済を効率化するIT革命は放っておくと失業を増やし、社会の階層差を拡大するのでどこかの国の首相の様に手放しで礼讃する訳に行きませんが、環境技術の開発と資源の再利用システムの構築へとつなげれば、新たな雇用の創出と21世紀の資源循環型社会の実現が可能となります。最少限の新たな化石資源の利用で地球上の全ての人間に豊かな生活を保障する、それがIT革命であり、21世紀の人間の知恵ではないでしょうか。

◎“加藤紘一の乱”を再び
 昨年は何度も通信に登場していただいた加藤紘一さんですが、ようやくの反乱も残念な結果で終りました。今年は是非捲土重来を期したいものです。
 加藤さんには昨年の団塊政策研究ネットワーク(団塊ネット)の新年会で講演していただき、東大の五月祭での鳩山民主党代表との対談を約束してもらうも土壇場でのキャンセルで、やはり保守本流は政界再編の起爆剤にはなりえないかと、ガッカリしていたところに“加藤の乱”。快哉を叫ぶも糠喜びで腰砕け。そう感じた方は多かったと思います。
 しかし、この閉塞感を誰が突き破るのでしょうか。今年の参議院選で国民が自らの意思をしっかりと表示すれば、多分その後に衆議院の解散・総選挙、政界再編と続き、今回の加藤さんの行動が生きてくるのではないでしょうか。かって大学闘争で走り回った2百人弱の団塊ネットの会員も地方に帰って多くが、自民党の県議や市町村議。彼等もこのままでいいとは思っていません。再び加藤さんにも出番が来ると思います。

◎リスクとリターンの原理を!・・・柳沢金融再生委員長、21世紀日本を語る
 11月27日の東大三鷹クラブ第34回定例懇談会は柳沢伯夫金融再生委員長(東大三鷹寮S32年入寮)を講師に、期せずして加藤の乱の丁度1週間後、第2次森内閣成立の1週間前という絶妙のタイミングで行われました。以下は当日の司会ののメモを文章に仕立てたものです。文責はにあります。
 肩の力を抜く意味からも先ず政局の話からしたいと思います。私がなぜ加藤さんのグループ、宏池会かということなのですが、大蔵省の役人としての最後の仕事が官房長官、大平内閣の田中六助長官の秘書官という縁で宏池会に入りました。6月25日の総選挙後政界は流動的になりました。政党は社会的階層、グループの利害を反映して組織されます。自民党は基本的にサプライサイド、大企業の経営者、管理者には支持して欲しい。だが大企業だけとは実際にはいかず、地方では農民、独立自営業者、中小企業主をも代表しています。労働者は社会党が代表して来ました。ところが、わが方の支持階層が劇的に縮小して、かっては農民代表4人、商工業者代表2人、労働者代表1人が自分の地盤では当選していたのですが、今では農民を代表しても1人も通らなくなりました。何か切り口を見つけて支持基盤を広げる必要が出て来た訳です。民主党は支持基盤がはっきりしません。連合も支持していますが、菅さんは消費者運動出身という具合です。だから憲法、日の丸の問題でも方針がはっきりせず、党議拘束を外しても真っ二つに割れてしまいます。安定した支持基盤に支えられていないので、政策もはっきりしない訳です。アメリカは共和党が右寄り(小沢的)で社会基盤をしっかり掴み、労組ももう力がないんですが民主党はノスタルジックな社会民主主義という訳です。選挙登録をしないと投票できないのですが、自分が何党を支持するか明らかにして登録するので政治を安定させる訳です。
 6月の選挙はもっと自民党は負けると思ったのですが、36名減の233名になりました。公明党も負け、保守党は話にならないので、全体が過半数割れすると思っていたのです。しかし、民主党も過半数を取れず、共産党がいるので野党連合も自公保を上回れないだろう。その前に手を打つ必要があるということで、民主党に手を打とうかと加藤さんに言ったら、もう手を打っているよと言うことでした。加藤さんなら民主党のかなりの部分も賛成する。自民党は政権にしがみつきたいだけで、政権から転落すれば“馬糞の川流れ”(金丸元副総理)でバラバラになるので、民主党の全部又は一部を引きつけて加藤首班を実現すれば自民党はくっついて来る筈です。首班指名は一発勝負なので荒技でも何でも許されます。しかし、不信任は違うんです。蜃気楼総理は国民の人気がないし、野党も不信任案を出す。これに乗って自民党を出て、割れた後の自民党総裁を倒して首班にと加藤さんは考えた。しかし、解散・総選挙でもう一度首班指名ということになりますが、短期間に2度も荒技はできるものではないんです。これは邪道です。なぜ加藤さんほどの人がそうしたのか?小渕さんになぜ挑戦したか?なぜ少しの時間を待てないのか?森内閣も直ぐ倒れるのにです。後から迫って来る亀井さんの様な者がいるという人もいるが、熟柿が落ちるように総理になっても思い通りのことができないと真面目に考えるんです。惜しい人です。マスコミは直後に皆けなしていますが、私はそうは思いません。何十年も考えないとああいう人間はできません。掛け替えのない政治家です。再起を図らせなければなりません。私はあの翌日に加藤さんに宏池会の代表を止める様に進言しました。宮澤さんを一時代表にすれば二つの勢力は一つになる。他も宮澤さんにすがるだけで頼りないんです。宮澤さんが頭に座るとすっきりし、本人は閉門蟄居すれば、1年もすると又、声が掛かる。野中さんは話もうまく迫力もあるんですが結局ポピュリストです。風向きを見て、それも大事ですが、2歩くらい先を言うと皆ホーッとなる。加藤さんはもっと真面目に国の方向を考えている。
 今自民党の中で日本経済再生システム研究会を組織して主宰しています。日本経済再生のシナリオ、国の進路を国民に示す必要があるからです。過日、加藤さんを囲む5人、亀井さんを囲む5人で会合を持ちました。加藤さんが構造改革をしなければと言ったら、亀井さんがそんなことやったら不景気になる、駄目だとあの調子で、指差して言ったんです。そしたら加藤さんは一言も言わない。構造改革とは何かが結局わからないから、一言で言えないからです。経済が発展するためには発展する力を持つシステムが必要です。司馬遼太郎が官僚を分電盤と言ってますが、いいものを外国から持って来て適した所に持って行く、そのエネルギーが無くなりました。今回の不況はバランスシート不況とも呼ばれ、バブル時の不良債権は基本的に解決したが、デフレで土地も株等も下がり逃げ水の様に又、不良債権が発生する。デフレでバランスシートが病んでいるから税金でも何でも入れて解決すればいいという考えもある。しかし、ゼネコン、流通は供給過剰、競争過多で業界再編が必要な面もあるが、エンジンが吹き飛んでしまった。そのためには資本主義の原理へ戻る、競争原理、リスクとリターンの原理を取り戻すべきです。大蔵省の同期の頃の連中が今では誰も銀行の頭取になりたがらない。営々とサラリーマンをやって来て、ほんの少し頭取をやったら責任を問われて全部持って行かれてしまう。これではリターンを日頃からくれなければ誰もリスクを取らない。従って日本も株主重視の経営、ハイリスク・ハイリターンの社会にどうしてもなる。資本主義の原初的なエネルギーに戻るしかない。金融の世界もそうなるしかないんです。
 金融再生委員長なんて、あんな所に行って大変だと思ったが、大蔵省が潰さないと言えば潰れない時代は終わったと思った。誰が潰すかと言うとマーケットです。だが私もマーケットを知らない。再生委員に誰かマーケットを知っているかと聞いても誰もいない。そこで東大経済出の、外資系が撤退した後独立して投資顧問業をしていた33歳の人間を無理に頼んで秘書官にした。もう一つは広報をピシっとやれなければいけない。大蔵からのあてがいでは仕様がない。国土庁長官をしていたので建設省出身の国土庁の広報室長を当てた。もう一つは事務局長は行政なので司法畑からは駄目だし、大蔵は接待疑惑で×印なので大蔵OBを持って来た。民間からの秘書官に最初は役所の拒絶反応があったが、大学が一緒というのが良かった。大学で同期とか言うのが現れて溶け込んで行った。同質の者、純粋培養の者だけで仕事をしてはいけない。異質の者を混ぜてやった方がいい結果が出る。色々な分野での経験が個性になって表れて良かったと思います(以上)。
 その後の組閣で柳澤先輩は再度、金融再生委員長の要職に就かれました。前の二人が余りに酷かったので彼しかいなかったのでしょうが、今年は金融危機の再来、再度の公的資金の投入が言われています。そうなる前に思い切った手を打って欲しいものです。

◎鳩山さん!相乗り首長選は止めましょう
 もう一つ政治をわかりにくくしているのが、自治体での相乗り首長選と共産党を除いたオール与党化です。昨夏の北川三重県知事を迎えた団塊ネットの総会後のパーティに鳩山民主党代表も駆け付けてくれました。同席したかっての安田講堂防衛隊長、今井澄参議院議員が党首に長談判。さては真近かの長野知事選に出るということかな、それも面白い。と思っていると結果はご存じの通り。民主党は自由投票となり、今井さんを除いたあらかたの議員は副知事を支持し、完全に民意を読み誤るというか、民意からかけ離れてしまっています。
 ところで、この4月にはの棲む大沼(住所は大沼町1-117-7)がある小平の市長選もあります。ここはかって菅幹事長の地盤で、先の衆議院選でも民主党の末松候補が圧倒的な票差で自民党候補を下し、二人の都議も選挙では民主党の小林都議が自民党の都議に大差をつけて当選。市議会の最大会派も民主党で議長を出しています。なのに何故か前回は現職を支持し、小林都議の新年会には市長も顔を出します。
 しかし先の衆議院選では市長が遂に自民党候補支持に回りました。覚悟の上の行動だと思いますが、それでも民主党は独自候補を立てないのでしょうか。助役上がりの市長も次は3期目、パットした業績もありません。ここは一つ民主党が奮起しないと、長野の様な結果になるかも知れません。 

◎教育と生活水準の向上が地球を救う!
 NPO法人「緑の地球ネットワーク」のメンバーとして昨年来3度、中国の半砂漠地帯の黄土高原緑化の旅に出かけると、もう一つの人口大国インドも見たいという想いが募る。地球号の乗客60数億人の内、中国の12億、インドの10億で3分の1を占める。一人っ子政策で人口の急激な増加が止まり、日本以上の高齢化社会化の急激な到来が危惧される中国に比べ、インドの人口は早晩中国を追い抜く。人口増を止め、環境技術に裏打ちされた資源循環型の豊かな世界が実現できるか。21世紀の地球号の命運はこの2国で決まる。安いパックを探してこの夏首都デリー、古都ジャイプール、有名なタージマハールのあるアグラと北インドの3都市を4泊5日の駆け足で巡る。
 白亜の高級住宅街の外壁に沿って、丸太と防水シートのスラムが続き、交差点で車が止まると、窓ガラスを叩き金をくれと少女がねだり、物売りが器用に車の間を巡る。アバラ骨が透けて見えるやせ細った子供の兄弟が、裸に近い状態で、歩道に横たわる。大渋滞の車の洪水を水牛が悠然と横切り、逆行し、車はそれを避けて通る。喧騒と猥雑さと貧困。百聞は一見に如かず。中国も凄いがこれほどではない。それに中国では沿海から内陸に入るにつれ目に見えて生活レベルが落ち、いわば縞模様のように格差がついているが、インドでは同じ地域の中で一握りの大富豪と多数の貧民が雑居し、その落差がすごい。濃い斑模様だ。先ず可能な所から豊かにと沿海部の経済発展を進め、次に内陸部との格差解消をと西部大開発を意気込む中国。カースト制や宗教問題が複雑に絡み、難しそうなインド。高いIT能力を評価され、その能力の供給を世界から期待されるインドだが、義務教育制度もなくて人口の半分は学校に行けず、頭脳流出も激しい国で、ITで10億の人間を豊かにできるか。コンピューターとインターネットで学校教育の隘路を突破できるのか。
 今回の旅は最少催行人員が2名のパックにもかかわらず、なぜか参加者は私1人。ガイドとマンツーウーマンの旅に。ガイドのシーマは高校を跳び級し、20歳で名門ネール大学の日本語学科を卒業した才媛。アメリカ大使館に勤める夫とは見合い結婚(インドでは見合い結婚が普通)、夫の両親と同居しメードもいて、料理はしたことがないという。29歳で子供がいないのでどうしてと聞くと、もっと仕事のキャリアを積みたいとのこと。いずれ産むつもりだが、1人だけという。ネール大学の同級生でまだ子供のいない同僚のシャリーニもやはり同じ答え。貧しいがゆえに幼い働き手として沢山の子供を産み、乳幼児死亡率が高いがゆえに目減りを覚悟して沢山の子を産む。子供が多いがゆえに更に貧しくなり、満足な教育も、働き口も与えられないという、子沢山と貧困の悪循環に陥っているインド。だがインドでも高等教育を受けた、豊かな階層の女性は働きながら子供を育て、子供も1人しかつくらないという。
 卑近な例で恐縮だが、我が家も親父の兄弟は10人で教育は高等小学校止まりだった。お袋も10人産んで死産が1人。20歳で姉が1人白血病でなくなり8人健在だが、女5人と男4人全員が高校に進み、北大で水産学を学んだ長兄と4男の私が更に大学に進み、田舎に残り郵政省の職員になった3男が明治の創業以来の「家業」の郵便局の4代目局長に。そして、8人兄弟の内姉2人が3人の子をつくるが残りは2人だけで、18人中16人の孫が大学に進学した。自家消費分くらいは作れる田畑があったとはいえ、戦後の貧しい時代に下級公務員の父が9人の子を国公立とはいえ全員高校に通わせ、2人を札幌と東京の大学に学ばせるのは大変なことだった。畑仕事や、乳牛を初めとした家畜の世話、母親が請け負った形になっていた電報配達、それにキノコや山菜採り、冷たい海に入ってのアオサ採りやワカメ拾い等、子供も働かされた。結果として子供の代で、結婚した2人が2人の子を産む単純再生産のプロセスに入った訳だが、経済の高度成長時代を通じて国民の教育レベルの向上が豊かな社会を実現し、人口増が止まった。子供が労働力として期待されることもなくなった。孫も12人が既に結婚しているが、そのうち5人がそれぞれ2人の曾孫をつくっている。いずれ結婚しない者も、1人しか産まない者も出て来るだろう。これまでは豊かな社会の実現で寿命が伸び、出生数が減っても人口は増えて来たわけであるが、寿命の伸びも限界となり、人口は停滞から減少へと向かう。インドでも教育レベルが向上すれば豊かな社会の実現が可能で、そうすれば人口増も止まるであろう。まさに教育がこの国の鍵を、従って21世紀の地球号の命運を握っている感を深くした旅であった。21世紀の「豊かな社会」が資源浪費型の使い捨て社会ではなく、環境技術に支えられた資源循環型の社会でなければならないのは勿論であるが。

◎ハリジャンの子の里親になろう!・・・勝手に応援だ!ん?宣言F
 土曜の午後、居候させてもらっている事務所に仕事に行くと、サマンバヤの会が定例の会合をしていることがある。居候先の、学校教育用のソフトやシステム構築の会社ラティオインターナショナルの社員の木村君が事務局長をし、娘が世話になっている恵泉女子大の大橋正明先生や、埼玉医大の事務局の須田沃先輩(東大三鷹寮S40年入寮)が副代表で、代表の寺田さんの出身の東京農大等の若い学生も交えてワイワイ議論をしたり、会報発送作業をしたりしている。
 サマンバヤの会はインド・ビハール州にあるサマンバヤ・アシュラムに対して、主にアウトカーストの子供の教育のために里親という形で資金援助をする窓口として活動している。里親といっても日本へ子供を連れて来て養育する訳ではなく、養育費を負担してインドのサマンバヤ・アシュラムへ送金する。1人の里親の申出があった時点で、アシュラムでは周辺の家庭からアシュラムでの養育を望む子供を受け入れ、その子供に対して5年間養育費を送る。その5年が過ぎると更に5年間子供はアシュラム内の農作業などをして生産を助けながらアシュラムで生活し、「卒業」する。養育費はアシュラムの財政の中に繰り込まれ、その中から子供達への諸費用を出して行くという仕組みである。
 サマンバヤ・アシュラムはガンジー翁の四大弟子の1人、ビノーバ翁が創設した。アシュラムとはヒンディー語で「同等の仕事」の意だが「精神修養の場」とか、ある種のセンター的役割を担う組織も指す。サマンバヤは「調和」とか「融合」などを意味する。つまりサマンバヤ・アシュラムとは「調和のための修養道場」でインドの、そして地球上の全ての人類の調和を目指す研修施設と言える。サマンバヤ・アシュラムでは、子供の教育こそが未来のインドの開発のためになるという考えから、身分制度のために抑圧されているハリジャン(不可触賤民)の地位向上のために、その子弟の教育に重点を置いている。
 サマンバヤの会には里親会員と賛助会員がいる。里親会員はサマンバヤ・アシュラムが養育する子供の資金を援助し、里親会員に登録されると、サマンバヤ・アシュラムは養育すべき子供をサマンバヤ・アシュラムに連れて来て養育を始め、5年間はその子供の養育費を里親会員が保証することになる。養育費の支払い方法は半年毎に1万2千円、1年毎に2万4千円、5年一括12万円の3通りあり、この中から1年当たり1万4千円〜1万5千円(4千ルピー相当)をサマンバヤ・アシュラムに送金し、残りが会の運営費用となる。賛助会員は会の活動を資金面で支え、応援する。会費は1口5千円/年で、会の運営費用に当てる。会員にはサマンバヤ通信が送られ、定例会や講演会、インドへの交流ツアー等に参加できる。あなたの資金援助でインドの街角で物乞いする少女が先生やIT技術者等に成長してインドの発展に役立てば、支援した我々も社会への貢献と新たな連帯による満足感を得ることができる。グローバルな視点に立てば、これから1人の日本人を地球号の新たな乗船者として増やすより、増えてしまったインドの子供達を立派な乗組員として教育した方が合理的だという考えも成り立つかも知れません?!
  サマンバヤの会 ホ−ムページ http://questions.gr.jp/samanway/
  〒221-0861 横浜市神奈川区片倉町291 045-481-0158 fax045-481-0158

◎トイレ異聞その2・・・タージマハールで
 外国へ旅行すると一番面倒なのがチップである。誰に、どのタイミングで、幾ら渡すか。日本ではその習慣がないだけにいつも迷う。高校生の頃、今はバスケットで有名な能代工業高校の先生をしている、八森中学校の同級生で熱心なクリスチャンの佐藤勇一君に誘われ教会に行くことがあった。何でも見てやろうという精神で顔を出しているだけなのだが、起立して賛美歌を歌う時間が来る。賛美歌は知らないし、ひどい音痴だ。冷や汗をかきながらも口だけパクパクさせてどうにか凌ぐ。このしぐさはいつも学校で音楽の時間に練習しているからどうにかなる。その内、後ろからチャリンチャリーンという音が聞こえて来る。献金の時間だ。出すべきか、出さざるべきか。私はクリスチャンじゃない、しかし、皆出している。音は段々大きくなって近づいて来る。握る拳に汗がにじむ。チップで迷う時、なぜかこの光景を思い出す。
 インドの観光地の公衆トイレはチップが必要で、10ルピーが相場である。1ルピーが2円40銭くらいだから、インドの物価・所得水準からすると高い。サマンバヤの会が子供1人分の年間の養育費としてインドに送金するのが4千ルピーだから、1日1回のトイレで1年ほどで無くなる計算だ。中国も観光地の公衆トイレはチップが必要なところが多いが、大体2〜5角である。1元が13円ほどで、1角は10分の1元だから3角で5円ほど。これに比べてもインドのトイレは高い。
 しかし、中国の観光地の公衆トイレは余り綺麗とはいえない。天安門のトイレでさえプレハブの汲み取り式、小便器はスチールの長い溝になっていて、えらい高い位置にあった。北京の明の十三陵や西安の兵馬俑のトイレ等は水洗で清潔だが、山西省の恒山のトイレはひどかった。大同の近くにあり歴代の皇帝が即位するとその山に登り、山頂近くにあるお寺に詣でたという。緑の地球ネットワークの黄土高原植樹ツアーでも何箇所か観光するが、その一か所である。険しい山道を馬の背に揺られて登る。去年の夏のツアーでは何でも飲み込み消化する、鉄の胃腸を持つ私でもおなかの調子を悪くし、日に何度となくトイレに行った。我が家の2台のウオシュレットで過保護になっている尻はきっと、ゼネコンに叩かれっ放しの下請けの営業マンのお尻の様に真っ赤になっていただろう。馬上では列から離れてちょっと失敬と草むらに隠れる訳に行かない。用心深くトイレに向かう。ここのトイレはコンクリートの三和土に和式の便器大の穴が開いているだけで、汲み取り式になっている。入り口でチップを払い中に入る。夏でしかも観光客が多いせいか、もの凄い匂いだ。ちゃんと汲み取っていないのだろう。吐き気を催す。とてもじゃないが我慢できない。せっかくチップを払ったのに用を足さずに逃げ帰る。
 それに引き換えインドの観光地のトイレは水洗式で概ね清潔である。中国と違ってチップが後払いなのもいい。気に食わなければ払わなければいい。チップを受け取る人間がトイレの清掃もする。チップで生計を立てているのだろうが、中国ではトイレの前にたむろしているのは大体1人だが、インドでは2〜3人いる。両国の雇用事情を反映しているのか、それともトイレの仕事専門のカーストがあるというインドの特殊事情なのか。先日朝日新聞で便槽から汲み取ったし尿の入った桶を頭に乗せて運ぶハリジャンの女性の写真と一緒に、一つの便器に二つの流路を設け、一つの便槽が満杯になると流れを変えてもう一つの便槽を使う。1年ほどで乾燥して極く少量になった便を畑に運んで肥料にすることで、し尿桶を頭に乗せて運ぶ仕事からハリジャンの女性を解放するという、画期的なトイレ作りを進める運動の記事があった。同時代に田舎で育った人間は、畑で遊んでいて野壺にはまり糞尿まみれになった記憶のある方もいるでしょう。雪の畑で雪合戦でもしようものなら、その確率は各段に高くなる。その後、日本のトイレは世界一の人口を誇った江戸を、花のパリも及びもつかない世界一衛生的な都市とした、便所と畑の麗しい関係、資源循環のシステムを「水に流す」方向に直走りして便所からトイレに変身した。畑には有限な化石資源から作った化学肥料を注ぎ込み、他方で中途半端に「浄化」した下水を水系に垂れ流して水域を汚染し、富栄養化してしまうという「潔癖症」に陥っていますが、インドには便所と畑の麗しい関係、資源循環のシステムが健在です。
 インドのトイレで安心できる点として、まともなドアがついていることもあります。これが中国では丸見えだったり、腰までの高さしかない所が多く、日本人には苦痛です。昔よく入った警察の留置場を思い出します。二十歳の冬に砂川基地拡張反対闘争で初めて捕まり入った立川警察署の留置場は、房外のトイレに看守が連れて行ってくれました。二度目に入れられた大崎警察署は房の奥の片隅に水洗トイレがあり、扇型に並んだ房の中心点の一段高い所で看守が監視しています。トイレは一応囲ってありますが、腰の高さしかないので看守からは丸見えで、最初に用を足すのは少し勇気が要ります。終わると担当さんお願いします!と看守に声を掛け、看守がボタンを押すと我が分身は私の意思と関係なく、足下から勢い良く消えていきます。インドのトイレでもう一つ良かったのは、手の届く所に蛇口があってポタポタ落ちる水が空き缶に溜まっていることです。用便の後、紙ではなく左手でお尻を綺麗にするからです。これぞ「お手洗い」です。デリーに帰って独立の父ガンジー翁の廟のトイレに入った時です。ノブを押して水を流そうとしたのですが、何回押しても流れません。そこで水洗を自動から手動に切り替え、「お手洗い」の水でようやく分身を成仏させることができたのです。出ると何事も無かったかの様に、チップを求める手が伸びて来ます。一瞬迷いましたが、自分も知恵と労力を提供したとはいえどうにかなった、10ルピーは自分にとって端金だが向こうは生活がかかっている、と思うとここは私が我慢しました。アグラのタージ・マハールにはその前日寄りました。何故かここでも便意を催し入口左手のトイレに、そう言えばこの間あいつも来たんだ、このトイレに入ったのかななどと蜃気楼総理の顔まで浮かびます。目的を達して壮快な気分でノブを押すと勢いよく水がほと走ります。ところが水音が止んでも分身は相変わらず気持ちよさそうに水浴びしていて、私のズボンはびしょ濡れです。ロータンクと便器をつなぐパイプが外れていたのです。一瞬頭に血が上り、分身を成仏させることも忘れて飛び出すと、はいチップという顔で男が立っています。私は男に濡れたジーンズを指差し、金なんかやれないねと手を横に振り、ポカーンと口を開けたままの男と分身を置き去りにします。

◎健全な水循環とトイレ
 日本トイレ協会ではこの4月より7回にわたり「次世代トイレ研究会」を開催して来ました。ここでは21世紀のトイレ・し尿処理のあるべき姿を探るために、既存の水洗トイレ+下水道(浄化槽)の改善すべき方向性や既存のシステムに頼らない方式に関する検討・討議を重ねてきました。
 その研究会の中で、スウエ ーデンの建築家で、前WHO専門家でもある Uno Winbrad氏が著した「Ecorogical Sanitation」を翻訳出版しようということになり、この度刊行の目途が立ちました。本書はWHOが1997年に刊行し、世界各国に配布した「PrimarySchool PhysicalEnviroment and Health」(「初等学校の環境と保健衛生」として日本トイレ協会より出版)のベースともなっている本です。
 そこで、日本トイレ協会では Uno Winbrad氏が来日する機会に、次世代トイレ研究会を拡充する形で日本水環境学会、土木学会環境工学委員会、水文水資源学会と共催で「健全な水循環とトイレ」シンポジュームを開催します。これをきっかけに21世紀のトイレ・し尿処理の方向についてさらに議論が深まり、技術開発が発展することを願っています。
 日時 2001年1月19日(金) シンポジューム 13:00〜16:45会費6千円
                  出版記念交流会 17:30〜19:00会費6千円
 場所 国立オリンピック記念青少年総合センター センター棟3階309号(シンポ)
        (03-3467-7201)
     国際交流棟レセプションホールV(交流会)
 交通 小田急線参宮橋駅下車徒歩7分、地下鉄千代田線代々木公園駅下車徒歩10分
 申込 日本トイレ協会(03-3580-7487 FAX03-3593-1374)宛てFAXで。

◎東大三鷹クラブ35回懇談会・・・社会保障の将来
 1月26日(金)、神田の学士会館での21世紀幕開けは、先般内閣が設置した社会保障制度に関する有識者会議の座長を務められた貝塚啓明中央大学教授(三鷹寮S27年入寮)に、今世紀の日本にとって最再重要課題の一つである「社会保障」について話していただきます。

◎今年も封筒番号末尾21の方には、故郷八森産のハタハタ入り蒲鉾の年賀を贈ります。 
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